第2報 市民が活用できる多くのヒントがある(2013.4.23)

第2報 市民が活用できる多くのヒントがある(2013.4.23

会議2日目も一般討論が続いた。午前中に15か国・グループ、午後に18か国・グループと1国際機関が発言した。まだ発言希望国が残っており、明日の午後にも一般討論が続くことになった。今日の午前の発言国の中には、日本とオーストラリア主導で結成された10か国グループ「核軍縮・不拡散イニシャチブ」(NPDI)を代表したオランダがあった。午後の会議では、第0報で掲げた注目国であるメキシコ、コスタリカ、ノルウェーの発言があった。会議周辺では、「核兵器の人道的影響に関する共同声明」が新しく出されることを巡ってNGOの活動が活発化している。

重みを増すNPDIの存在と責任

NPDIを構成するのは、日本、オーストラリア、ポーランド、オランダ、ドイツ、カナダ、メキシコ、チリ、トルコ、アラブ首長国連邦の10か国である。NPDIは今回の準備委員会のために4月9日のオランダのハーグで第6回外相会議を開催した。それは、オスロで「核兵器の人道的影響」国際会議が開かれた約1か月後でもあった。そのときの共同声明(英文和訳)がNPDIの今回の行動の基礎となっている。昨年の準備委員会においては、NPDIを代表する演説はトルコが行ったが、今回はハーグ会議を開催したオランダが行った。昨日の会議で日本政府を代表して北野充大使(軍縮不拡散・科学部長)が発言(英語)したが、その中でNPDIは会議に6個の新しい作業文書の提出を準備していると明らかにした。

オランダ代表の今日の演説(英語)は、昨年の作業文書「軍縮・不拡散教育」のアップデートを含めると7個になる作業文書の中味を説明するものであった。当然のことながら、内容は上記共同声明の域をほとんど出るものではなかったが、その内容には市民が活用して政府に働きかけるべき多くのヒントが含まれていることを指摘しておきたい。出された作業文書は、①包括的核実験禁止条約(WP.1)、②輸出管理(WP.2)、③非戦略核兵器(WP.3)、④核兵器の役割削減(WP.4)、⑤核軍縮不拡散教育(WP.12)、⑥核兵器国における保障措置の適用拡大(WP.23)、⑦非核兵器地帯と消極的安全保証(WP.24)。括弧内は会議における公式の文書番号である。

現在までのところ全体で27個の作業文書が提出されているが、国家グループで7個の作業文書を出しているのは、非同盟運動が同じ7個を出している他にはない。数が多ければ好いというわけではないが、NPDIの存在感が増していることは否めない。しかも、日本、オーストラリア、ドイツ、カナダといった西側の影響力のある大国が含まれているから、その言動は重みを増して行かざるを得ないであろう。被爆国日本がそのなかで背負う責任を日本政府は強く自覚して欲しいし、市民は強い関心と監視の目を注ぐべきであろう。

NPDIは全会一致の方針で運営されている。今日のNPDI演説の中には、メキシコのような積極的な国が正論を主張することによってもたらされていると思われる好い結果を窺うことができる。メキシコがイニシャチブをとっている「核兵器の非人道性」の主張を核軍縮の原理として強めようとする動きや、「オープン参加作業グループ」(OEWG)によって停滞しているジュネーブ軍縮会議(CD)の行き詰まりを打開して核軍縮会議を前進させようとする動きについて、NPDIがいずれも肯定的に表現している。

活用すべき例の一つは、作業文書「核兵器の役割削減」(WP.4)に書かれている次のような一節である。

「(核兵器の)量的削減は安全保障戦略や軍事ドクトリンにおける核兵器の役割や重要性を削減する措置を伴わなければならない。このような措置は完全核軍縮の目標に重要な貢献をし、また更なる量的削減へと相互に強めあうことになる。」

この言葉は、日本自身にも適用されるべきものである。日本は核兵器の役割を重視して米国の核の傘に依存するという安全保障戦略をとっている。しかし、核兵器を削減し廃絶するためには、核兵器の役割を減らせる努力をせよと、NPDIは言っているのである。言行一致するためには核の傘に依存する現状を変えてゆく日本自身の努力が問われることになる。たとえば、北東アジア非核兵器地帯の設置へと前進することが、そのような努力の有力な方法となる。

場外で動く「核兵器の人道的影響」に関する共同声明

NPDIに注ぐべきもう一つの関心は、「核兵器の非人道性」を巡って、このグループがどのような役割を果たすかであろう。今日のNPDI演説は「NPDIメンバー国は、2013年3月4日から5日までノルウェーのオスロで開催された『核兵器の人道的影響に関する会議』に参加した」と述べた。調べてみると、確かに10か国全てが出席している。何らかの意思一致があったと考えられる。上記の作業文書はこの問題についてのグループの一致点について表現に苦心をしたことを窺わせている。この表現は、市民が十分に吟味し活用すべきものだ。

「いかなる核兵器の使用も破滅的な人道的結果をもたらすことを考えれば、65年間以上核兵器が使用されなかった記録が永遠に延長されるべきことが至上命令となる」(第6節)。「この道を確実に進め、核兵器が今後ふたたび使用されることを防止するため、核兵器の使用の可能性が今日よりもさらに遠のくように具体的な努力がされなければならない」(第7節)。

この内容は歯切れが悪いし前後自己撞着にも見える。NPDIは「メキシコがこの問題についてフォローアップ会議を招集すると申し出たことを歓迎する」と演説の中で表明した。日本政府が歓迎した理由を、作業文書の真意とともに質されてゆくことが大切であろう。国会でも議論されるべき問題である。

このことと関連して、会議場の外で進んでいる大切な動きが伝えられている。オスロ会議に積極的に関わった国際市民運動ICANの情報によると、オスロ会議を踏まえて新しく出されようとしている「核兵器の人道的影響に関する共同声明」に63か国が賛同しているとのことである。名簿を見ると、NPDIでこの中に含まれているのは、チリ、メキシコだけであり、昨年10月の35か国のときと変わらない。現在、署名国を増やす努力が続けられている。因みにメキシコも所属している新アジェンダ連合(NAC)という現在で6か国の国家グループがあるが、この6か国は昨年10月と同様にすべてが賛同国として名前を連ねている。

04.23. workshop1(NGOルームでワークショップを終えたユース代表団。2013年4月23日午後。撮影:RECNA)