第11報 多くの課題、そして前進への手掛かりを残して終了(2013.5.3)

第11報 多くの課題、そして前進への手掛かりを残して終了(2013.5.3

(閉会直後のフェルーツァ議長(右)。2013年5月3日。撮影:RECNA)

(閉会直後のフェルーツァ議長(右)。2013年5月3日。
撮影:RECNA)

2つの文書

2週間にわたった準備委員会も最終日を迎えた。今日は「報告書」の採択が行われる日である。昨日の本ブログで触れたように、報告書草案は、前日(5月2日)の午後6時に配布され、各国の検討に付されていた。ここで言う報告書とは、あくまで今回の準備委員会の事務的、手続き的な事項についてのレポートである。開催日程、参加国数(106か国)、議事進行、提出文書名等が書かれている。

昨晩6時においては、もう一つ別の文書が配布されていた。それが「議長の事実概要」(Chairman’s factual summary)草案である。2週間の会期中に出された各国政府のステートメントや作業文書の内容を議長が要約したものだ。

議長の事実概要は、例年の準備委員会で作成される文書であるが、これをめぐっては往々にして「ひと悶着」がある。つまり、各国政府としては自国の述べた(あるいは提出した)意見や提案が遺漏なく盛り込まれているかに最大の関心があるわけであるが、各国の見解にそもそも隔たりがあるなかで、議長の要約が「不平等」であると不満が出されるのである。過去の準備委員会においては(少なくとも2007年、2008年においては)、同様の概要について参加国の合意を得ようと試みられたがうまくいかず、結果、「作業文書」の一つとして報告書に添付されたという経緯がある。作業文書とは、会議における公式文書ではあるものの、あくまで各国や国家グループの責任で出されるものであって、全体で合意した文書ではない。つまり、作業文書にするということは、議長概要を「議長の私的なまとめ文書」と位置付けることを意味する。昨年の第1回準備委員会においては、ウールコット議長が議長概要をはじめから作業文書として提出する(=全会一致合意を目指さない)ことを選択し、議論紛糾を避ける判断を行った。

今回、各国政府に配布された草案には、明確にそれが作業文書であると示す証拠はなかった(作業文書であれば文書番号にWPの通し番号が付く)。結果的に、今日の討論のなかで議長はそれが作業文書であることを口頭で明らかにしたが、この若干のあいまいさが今日の紛糾の種となった。

議長概要に各国が反応

今朝は、通常通りの10時開始が予定されていたが、1時間以上が経過してから事務方より「非同盟諸国」(NAM)が協議中のため開始が遅れること、他方、通訳の関係で13時までにセッションを終了させなければならない旨が通告された。

結局、会議が始まったのは終了予定まで残りわずか40分となった12時20分であった。議長は慌ただしく議事を開始した。報告書については、参加国リストの最後にエジプトの途中退席の旨が加えられるなどの修正を加え、わずか15分足らずで採択が終了した。議長は各国の協力に謝意を述べ、続いて議長概要を紹介した。

これに噛みついたのがNAMを代表して発言を求めたイランである。イランは報告書が不正確かつ主観的であり、NAMとして到底受け入れられないと激しい口調で述べた。これに対し、議長からは、前述のように文書が「作業文書」であることが告げられた。

続いて20の国及びグループが発言を行った。議長の努力を称賛する国がほとんどであったが、NAMのいくつかの国は議長概要の不十分さを指摘した。特に再度発言したイランは、議長に対する個人攻撃ではないという前置きをしつつ、議長概要の作成そのものが無意味であり、今後は不必要との論を展開した。いくつかの国からは、議長概要の位置づけについて再度明確な説明を求める声もあがった。また、非人道性声明に言及した南アフリカは、本準備委員会が「核兵器をめぐる議論の大きな転換を目撃」し、核兵器使用の壊滅的結果が「国際アジェンダとして確固たる地位を築いた」と述べ、核兵器の完全廃棄に向けた各国のさらなる行動を要請した。

こうして予定時間をやや超過した13時20分、第2回準備委員会の閉会が告げられた。会場には拍手が起こった。

 議長の事実概要の内容

本ブログの第0報で今回の再検討会議で注目すべき点をいくつか挙げたが、それらについて議長概要がどのように触れているかを以下に関連部分を抜粋(暫定訳)して紹介し、コメントを加える。

オープン参加国作業グループ(OEWG
第26:複数の加盟国は、ジュネーブ軍縮会議(CD)が核軍縮に関する下部機関を速やかに設置すべきであることを想起した。多くの加盟国は、2015年再検討会議において核軍縮に関する下部機関が設置されることを求めた。これらの加盟国はまた、2015年再検討会議が特定の時間枠の中で核兵器を廃棄することをめざした行動計画を採択することも求めた。多くの国が、国連総会決議(A/RES/67/56)に従って設置されたOEWGが核兵器のない世界の達成と維持に向けた多国間核軍縮交渉を前進させるための諸提案を策定することを求めた。他の加盟国は、核軍縮に向けたステップ・バイ・ステップの貢献を再確認した。多くの加盟国は、2013年9月26日に核軍縮に関するハイレベル会議を開催するという国連総会の決定を歓迎した。それらの加盟国は、同会議が核軍縮の目標実現に寄与するものになることへの期待を表明した。

コメント:議長はこのように、核軍縮についての議論の場を①CDの下部機関、②2015年再検討会議の下部機関、③OEWG、④ステップ・バイ・ステップの議論の場、⑤9月26日のハイレベル会議と列記した。①は行き詰まっている、②は常に要求されている当然の要求で、おそらく実現、④は次元が違うが従来の繰り返しの主張であり、③と⑤が当面の具体的な新しい関心となる。③のOEWGはここジュネーブで、5月14~24日、6月27・28日、8月19~30日の間に15作業日を取って行われる。NGOも傍聴が可能であり、政府への働きかけが可能である。すでにアボリション2000に集うNGOがタスク・フォースを作って取り組みを開始している。

◆核兵器の人道的側面
第12:複数の加盟国は、核兵器のいかなる使用によってももたらされる壊滅的な人道的結果に対する深い懸念を想起した。多くの加盟国が、一発の核爆発によって引き起こされる受け入れがたい被害に言及し、社会経済的発展へのより広範かつより長期的な影響へのさらなる懸念、ならびに、現在の再検討サイクルの中でそうした人道的結果の問題が継続的に取り上げられることへの期待を表明した。多くの加盟国が、2013年3月4日から5日までオスロで開催された「核兵器の人道的影響に関する会議」に言及した。これらの加盟国は、オスロ会議での議論を受けて、核兵器が使用された場合のそうした人道的結果は不可避であり、被害地に緊急支援を行うことは不可能であることへの重大な懸念を表明した。これらの加盟国は、事実ベースの対話を通じてこの問題に関する理解を深めるためにメキシコ政府主催で開かれるフォローアップ会議への期待を示した。

第13:多くの加盟国が、核兵器のいかなる使用もしくはいかなる使用の威嚇も、国際人道法の基本原則に反することへの懸念を表明した。いくつかの核兵器国は、それぞれの国家政策の下で、いかなる核兵器の使用も、適用可能な国際人道法に従って、極限状況においてのみ考慮されることを強調した。複数の加盟国は、国際人道法を含め、適用可能な国際法をすべての国家がいかなる時も遵守することの必要性を再確認した。

コメント:締めくくりの発言の中で南アフリカが述べたように、確かに2週間の会議におけるハイライトの1つは非人道性問題への国際的な共通理解の広がりであり、メキシコ会議という具体的な次のステップに向けた期待の高まりであった。しかし一方で、この潮流が今後どのように核兵器の非合法化に結びついてゆくかについての筋道はまだ明確ではない。議長のまとめが、メキシコ会議についてもまた「事実ベースの対話を通じて」と明記していることは注目すべきことであろう。日本、韓国、オーストラリア、多くのNATO諸国らの「抵抗」の根深さもあらためて顕在化した。これらの国々をいかに説得するかについて、今後の「非人道問題」推進諸国はもちろんのこと、世界の市民の創意が必要とされている。

◆中東決議
第72節:複数の加盟国は、2012年会議の延期に失望と遺憾の意を表明した。多くの加盟国は、組織形態や議題、成果文書、作業方法、会議に関連するその他の事項についてアラブ連盟が配布した政策文書に留意した。これらの国々は、アラブ諸国がファシリテーターへの建設的な関与を行っていることへの感謝を表明した。またこれらの国々は、会議の延期に与する議論に反対し、多くの加盟国は、会議延期は2010年NPT最終文書で合意された約束に対する違反であるとの見解を示した。これらの加盟国は、会議に関する不確定な状況が本条約に及ぼすマイナスの影響について懸念を表明した。

第73節:複数の加盟国は、2010年に合意された委任事項に従って、同会議を招集することへの支援を再確認した。多くの加盟国が、可能な限り早期、かつ遅くても2013年末までに会議を招集することへの支持を表明した。また、すべての地域国家が参加して会議を成功させるには、会議の議題及び日程にコンセンサスで合意することも含め、地域国家の直接的な関与が必要であること、ならびに、そうした合意がなされ次第速やかに会議を招集すべきこととの見解も表明された。複数の加盟国は、同会議招集の期限は守られなかったものの、会議への機会は失われていないことを認識した。

第74節:加盟国は、本条約の下における義務と誓約にすべての加盟国が厳格に従うことの必要性、ならびに、1995年決議の目的実現に資するため、すべての地域国家が関連措置と信頼醸成措置を採ることの必要性を想起した。これらの国々は、すべての国家が、この目標の達成を危うくするいかなる措置を採ることも差し控えるべきことを想起した。

コメント:中東決議の履行問題をめぐる行き詰まりは、今回の準備委員会のハイライトの一つとなった。エジプトが途中で会議をボイコットしたことは、参加国全体をとりまく不信・不満や停滞感を象徴している。議長のまとめのなかに「中東会議に関する不確定な状況が本条約に及ぼすマイナスの影響」について述べた部分があるが、確かに、単に中東地域の問題としてではなく、NPT全体への影響が懸念される。議長のまとめには、多くの国が遅くても今年中の開催を望んでいると述べている。この問題の帰趨は、来年の準備委員会、ひいては2015年再検討会議に大きな影響を及ぼすと思われる。

第2回準備委員会は終了した。このブログは、NPT会議全体を万遍なく報告するというのではなく、核兵器のない世界の実現と維持に必要な国家レベルの議論の状況を伝えるという目的を持って取り組んできた。会議からは核軍縮の深刻な停滞状況が続いていると認識せざるを得ないが、そんな中でも、OEWGへの関与を初めとして、9月のハイレベル会議を含む国連総会、人道的側面のメキシコ会議などに向かって、何をなすべきかを考える材料は豊富に含まれていた。少しでも読者の役に立つ情報が含まれていれば幸いである。

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(「地雷、クラスター弾、化学兵器、生物兵器は禁止された。次は核だ。」と折れた足の椅子のモニュメント脇に掲げられた横断幕。国連欧州本部前。4月25日午後。撮影:RECNA)

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